医療ミスで医療機関の法的責任を問う場合に、専門家(医師)の協力が必要なのでしょうか
医療ミス(過誤)を問う裁判では、原告(訴えた側=患者側)が「医療行為にミスがあったこと(過失)」「そのミスによって被害が生じたこと(因果関係)」を証明しなければなりません。このように、医療の専門家を相手に「過失」や「因果関係」を証明しなければならないので、専門知識の収集と理解は不可欠です。
医療問題弁護団に所属する弁護士は、研修等を通じて、医療に関する専門知識の習得に努めていますが、医療の専門家ではないので、医学的知識の理解や、個別の事例において医学文献で述べられている内容を事案にどのようにあてはめるのかを判断することには限界があります。
そこで、医療事件の相談を受け、調査をし、訴訟を提起して進める中で、随時、専門家(医師)の助言を得るようにしています。このような医師を協力医と呼んでいます。
医療問題弁護団の各相談担当弁護士は、面接相談後、医師を交えた会議に相談案件を持ち寄り、相互に意見交換するとともに、協力医からアドバイスをいただいています。
法的責任の有無を検討する前提として、事故が起きた診療科目を専門とする医師から意見を聞くことは不可欠です。各相談担当弁護士は、医療問題弁護団を通じ、又は、それぞれのルートで、協力していただける専門家(医師)を探すよう努めています。
訴訟の中で、立証の手段として、協力してくれる専門家(医師)からコメントをもらうことがあります。「意見書」「鑑定意見書」「私的意見書」などと呼びます。ときには、法廷で証言をしてもらうこともあります。
また、裁判官が「専門家(医師)の意見を聴きたい」と考えたときにとる裁判上の手続きとして、「鑑定」があります。裁判官が、原告・被告の意見を聴いたうえで、適任と思われる専門家に鑑定を依頼することになります。鑑定を依頼された専門家(鑑定人)は、医療記録や訴訟記録を検討し、裁判官の質問(「鑑定事項」と言います)に、文書や口頭で回答することになります。